2015年07月09日
絶歌 解けない魔法
少年Aによる神戸連続殺傷事件の手記が出版された。
被害者家族はまだ傷が癒えておらず出版差し止めを要求しているにもかかわらずだ。
僕はこの本を読んでいない。
読む気にもなれない。
読んでいない本のことをあれこれいうのはしないつもりだった。
しかし、この本は違う。
本の内容よりも出版したことが許せない。
「Aが起こした罪は償われている、もう出所したのだから自由である」と識者はいうがはたしてそうだろうか?
彼の刃は、すべて弱いものに向けられた。
動物、小さい子ども、障害のある子。
彼が殺した子供たちはその年齢から成長することはない。
いつまでもだ。
彼は世間に出てつらい思いをしたというが、辛いことも、苦しいことも生きていればこそ。
無くなった子供たちはそれすらない。
彼は、書くことで気を紛らすことができるかもしれないが、被害者は何もできない。
彼は未だに法律に守られていることを知っているのだろうか?
もし彼が今一度罪を犯しても少年時代に犯した犯罪のおかげで実名報道はされないのだ。
魔法はかかったまま。
こんな理不尽なことはない。
100歩譲って、出版するのなら、自分の素顔、すなわち本名をさらし世間の仕打ちを甘んじて受けるべきである。
こう感じるのは僕だけだろうか?
被害者家族はまだ傷が癒えておらず出版差し止めを要求しているにもかかわらずだ。
僕はこの本を読んでいない。
読む気にもなれない。
読んでいない本のことをあれこれいうのはしないつもりだった。
しかし、この本は違う。
本の内容よりも出版したことが許せない。
「Aが起こした罪は償われている、もう出所したのだから自由である」と識者はいうがはたしてそうだろうか?
彼の刃は、すべて弱いものに向けられた。
動物、小さい子ども、障害のある子。
彼が殺した子供たちはその年齢から成長することはない。
いつまでもだ。
彼は世間に出てつらい思いをしたというが、辛いことも、苦しいことも生きていればこそ。
無くなった子供たちはそれすらない。
彼は、書くことで気を紛らすことができるかもしれないが、被害者は何もできない。
彼は未だに法律に守られていることを知っているのだろうか?
もし彼が今一度罪を犯しても少年時代に犯した犯罪のおかげで実名報道はされないのだ。
魔法はかかったまま。
こんな理不尽なことはない。
100歩譲って、出版するのなら、自分の素顔、すなわち本名をさらし世間の仕打ちを甘んじて受けるべきである。
こう感じるのは僕だけだろうか?
2015年05月14日
『爆買』と『農協月へ行く』
最近の中国人爆買ツアーのニュースを聞くたびにみなさんいろいろと思うことがあるでしょうね。
僕も、よく言えばバイタリティ溢れる、悪く言えば品が…(以下自粛)。
で、このニュースを聞いて思い出した本があります。
筒井康隆氏の『農協月へ行く』
簡単なストーリーの紹介です。

田舎の農業をやっている集団が農協のツアーで旅行に行きまくります。
で、地球上ではほとんど行きつくしたので「月へでもいくべか」となりました。
物おじしない、おっちゃん、おばちゃんが月へ旅行に行きましてね。
まぁ、月でどんちゃん騒ぎをしていたんですな。
すると、月では他の星からも宇宙人の団体が旅行に来ていました。
人類が初めて宇宙人と出会った瞬間、第1次接近遭遇。
いわば、「未知との遭遇」ですな。
でもそこは、バイタリティに溢れたおじ、おばたち。
すぐに打ち解けて「まぁ、こっちきて一緒に飲むべ。」となったわけです。
エイリアンたちと和気あいあい、飲めや歌えの大騒ぎ。
無事に友好を果たしたわけですね。
これによって宇宙戦争は回避されたわけで農協のおじ、おばたちの面目躍如。
で、よく調べてみると向こうの宇宙人もその星で「農協」と呼ばれる集団であった…。
というオチです。
もう30年以上も前の短編小説なのでうろ覚えですがこんな内容だったと思います。
いまでこそ、日本人は礼儀正しいと言われていますが、3,40年前まではこんな感じだったんですね。
その少し前まで、ヨーロッパでは、アメリカ人(ヤンキー)がそういわれていましたね。
時代は繰り返す、先進国になるための「はしか」みたいなもんですね。
こんなことを思うと少しは理解ができる気がします。
筒井康隆氏の小説面白いのがたくさんあるので読んでみると楽しいですよ。
中には、「時をかける少女」など真面目?なSFもありますので。
僕も、よく言えばバイタリティ溢れる、悪く言えば品が…(以下自粛)。
で、このニュースを聞いて思い出した本があります。
筒井康隆氏の『農協月へ行く』
簡単なストーリーの紹介です。

田舎の農業をやっている集団が農協のツアーで旅行に行きまくります。
で、地球上ではほとんど行きつくしたので「月へでもいくべか」となりました。
物おじしない、おっちゃん、おばちゃんが月へ旅行に行きましてね。
まぁ、月でどんちゃん騒ぎをしていたんですな。
すると、月では他の星からも宇宙人の団体が旅行に来ていました。
人類が初めて宇宙人と出会った瞬間、第1次接近遭遇。
いわば、「未知との遭遇」ですな。
でもそこは、バイタリティに溢れたおじ、おばたち。
すぐに打ち解けて「まぁ、こっちきて一緒に飲むべ。」となったわけです。
エイリアンたちと和気あいあい、飲めや歌えの大騒ぎ。
無事に友好を果たしたわけですね。
これによって宇宙戦争は回避されたわけで農協のおじ、おばたちの面目躍如。
で、よく調べてみると向こうの宇宙人もその星で「農協」と呼ばれる集団であった…。
というオチです。
もう30年以上も前の短編小説なのでうろ覚えですがこんな内容だったと思います。
いまでこそ、日本人は礼儀正しいと言われていますが、3,40年前まではこんな感じだったんですね。
その少し前まで、ヨーロッパでは、アメリカ人(ヤンキー)がそういわれていましたね。
時代は繰り返す、先進国になるための「はしか」みたいなもんですね。
こんなことを思うと少しは理解ができる気がします。
筒井康隆氏の小説面白いのがたくさんあるので読んでみると楽しいですよ。
中には、「時をかける少女」など真面目?なSFもありますので。
2015年03月04日
ストゥハァ 人間の証明
「読んでから見るか、見てから読むか。」
みなさん、このフレーズ知ってます?
知っている方は僕と同世代の方ですね。
これは、角川書店が本と映画、音楽とのコラボで行ったCMのフレーズです。
その時の小説が「人間の証明」

♪ママァ~ドゥユウリメンバァ~~
のジョー山中の歌とともに、松田優作のナレーションで
母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね
ほら、夏碓氷から霧積へ行くみちで、
渓谷へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
西条八十の詩の朗読が流れて、映像では麦わら帽子が谷底へ落ちていくさまが流れていました。
この小説、僕は読んでから見ました。
当時、読みだして、引き込まれるように一気に読んだのを覚えています。
日本、アメリカを舞台に壮大な人間ドラマが繰り広げられていきます。
タクシーに忘れられた、西条八十の詩集。
古い麦わら帽子
そして、ホテルを見上げて混血の青年が叫んだ言葉。
「ストゥハァ!」
アメリカにいたとき、「キスミーに行く」と言っていたこと。
成功した人間と、その子どものみじめな暮らし。
過去を切り捨てたい人間と、手繰り寄せたい人間。
さまざまな人の思いが交錯して物語は進んでいきます。
当時、東京へ行ったばかりの僕は、この「ストゥハァ」がホテルニューオオタニであることにいたく感動しました。
そう、下から見上げるとまさに帽子なんですね。
いろんな物語がやがてひとつになる。
親子の絆、本当に守るべきものは?
当時の日本とアメリカの関係、戦後を引きずっている社会…。
戦後70年、もう一度読み返してみたい一冊です。
映画に出演していた、
松田優作、夏八木勲、ジョー山中、ハナ肇などほとんどの方が鬼籍に人となられています。
邦画ががんばっていた時代ですね。
you tube CMです。1分30秒頃
映画予告編
最初の映画」見たくなりますよ。
みなさん、このフレーズ知ってます?
知っている方は僕と同世代の方ですね。
これは、角川書店が本と映画、音楽とのコラボで行ったCMのフレーズです。
その時の小説が「人間の証明」

♪ママァ~ドゥユウリメンバァ~~
のジョー山中の歌とともに、松田優作のナレーションで
母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね
ほら、夏碓氷から霧積へ行くみちで、
渓谷へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
西条八十の詩の朗読が流れて、映像では麦わら帽子が谷底へ落ちていくさまが流れていました。
この小説、僕は読んでから見ました。
当時、読みだして、引き込まれるように一気に読んだのを覚えています。
日本、アメリカを舞台に壮大な人間ドラマが繰り広げられていきます。
タクシーに忘れられた、西条八十の詩集。
古い麦わら帽子
そして、ホテルを見上げて混血の青年が叫んだ言葉。
「ストゥハァ!」
アメリカにいたとき、「キスミーに行く」と言っていたこと。
成功した人間と、その子どものみじめな暮らし。
過去を切り捨てたい人間と、手繰り寄せたい人間。
さまざまな人の思いが交錯して物語は進んでいきます。
当時、東京へ行ったばかりの僕は、この「ストゥハァ」がホテルニューオオタニであることにいたく感動しました。
そう、下から見上げるとまさに帽子なんですね。
いろんな物語がやがてひとつになる。
親子の絆、本当に守るべきものは?
当時の日本とアメリカの関係、戦後を引きずっている社会…。
戦後70年、もう一度読み返してみたい一冊です。
映画に出演していた、
松田優作、夏八木勲、ジョー山中、ハナ肇などほとんどの方が鬼籍に人となられています。
邦画ががんばっていた時代ですね。
you tube CMです。1分30秒頃
映画予告編
最初の映画」見たくなりますよ。
2015年01月26日
アルキメデスは手を汚さない
「アルキメデスは手を汚さない」
1973年、乱歩賞受賞作品です。

当時、深夜放送「オールナイトニッポン」でこのCMが流れてました。
推理小説が好きで、この本というかこの人の小説は繰り返して読んだ記憶があります。
プロローグ、エピローグという言葉を知ったのも氏の小説から。
1970年代の時代背景を知っていないとこの小説の良さは分からないかな。
大人びた高校生、子供じみた正義感の高校生、当時の言葉でいう少し飛んだ高校生たち。
ピカレスク小説。
不良とは違う、どこかかっこいい、小気味よい少年たちの話。
ネット検索をかけてみると
「この小説との出会いが、本嫌いだったバカ高校生の運命を変えた」
東野圭吾
東野圭吾氏が作家になるきっかけになった小説らしいですね。
あらすじです。(ネタバレしないようにしますね)
少女Aの葬式から物語が始まります。
父親は「盲腸手術の失敗で死んだ」というあいさつをしますが、少し空気が動きます。
「本当にそうなのか…」
読経が終わり出棺しますが、その時ある高校生が口ずさみます。
「あの~ひと~は、逝って逝ってしまった~」
「よこはまたそがれ」のフレーズ。
どんな崇高な読経よりもこちらの方が送るにふさわしいと彼らは思っています。
少女Aの父親は工務店の社長。
誰がかわいい娘を妊娠させたのか? そいつが娘を殺したようなものだと。
犯人を捜そうと娘のクラスメイトたちを集める父親。
しかし、その意図を見透かしている同級生。
そんな中で出てきたのが、彼の会社に対する批判。
彼がマンションを立てたことによって、少年Aの家には陽が射さなくなり、おばあさんが「暗い、暗い」といいながら亡くなったと。
そんな時もうひとつの事件が…。
少年Bが少年Aの弁当を食べて倒れた。
その弁当には毒が。
なぜ少年Bが少年Aの弁当を食べたかと言うと、そのクラスでは弁当の「せり」(今で言うオークション)がされています。
仲介する生徒がいて、弁当を売買し、その手数料を取ります。
この少年Cは株の売買をしています。少年Aは、弁当がいらなくなり、売りに出したというわけですね。
一体誰が毒を入れたのか? なんのために?
少女Aが薄れゆく意識の中でつぶやいた言葉「アルキメデス…」
「アルキメデス」とは一体なんのことか?
少女Aの死。
弁当に入っていた毒。
次に少年Bの姉の交際相手の死体が発見されます。
はたしてこれらの事件に繋がりはあるのか? 繋がりがあるとしたら、一体どういう点で?
犯人は?
妊娠させた相手は?
僕は一気に読んだ記憶がよみがえります。
アルキメデスの意味、最後でわかりますが、その当時の時代背景を考えると納得がいきますね。
その当時70年安保が終わって、高校生たちの目標もなく、日本の高度成長期終盤、「シラケ世代」という言葉が出始めた時期でもあります。
氏も書いている、70年代を前にした学生は、体制の壁を壊そうとした人、ここに書かれている学生はその壁の高さを知った者たち。
トリックとかはその当時は斬新ですが、発表から40年が経過しているのでそれは考慮に入れるべきですね。
二転三転する内容、古い刑事と若い刑事の考え、高校生の幼さと大人びた雰囲気。
少年Bが少年Aの弁当を食べるべき必然性!
女子高校生のジェラシーなど。
面白く非常に読みやすい内容です。
この後、この作者「小峰元」氏は
ピタゴラス豆畑に死す
ソクラテス最後の弁明
パスカルの鼻は長かった
ディオゲネスは午前3時に笑う
イソップの首に鈴をつけろ
などを立て続けに発表します。
またおいおい紹介したいと思います。
1973年、乱歩賞受賞作品です。

当時、深夜放送「オールナイトニッポン」でこのCMが流れてました。
推理小説が好きで、この本というかこの人の小説は繰り返して読んだ記憶があります。
プロローグ、エピローグという言葉を知ったのも氏の小説から。
1970年代の時代背景を知っていないとこの小説の良さは分からないかな。
大人びた高校生、子供じみた正義感の高校生、当時の言葉でいう少し飛んだ高校生たち。
ピカレスク小説。
不良とは違う、どこかかっこいい、小気味よい少年たちの話。
ネット検索をかけてみると
「この小説との出会いが、本嫌いだったバカ高校生の運命を変えた」
東野圭吾
東野圭吾氏が作家になるきっかけになった小説らしいですね。
あらすじです。(ネタバレしないようにしますね)
少女Aの葬式から物語が始まります。
父親は「盲腸手術の失敗で死んだ」というあいさつをしますが、少し空気が動きます。
「本当にそうなのか…」
読経が終わり出棺しますが、その時ある高校生が口ずさみます。
「あの~ひと~は、逝って逝ってしまった~」
「よこはまたそがれ」のフレーズ。
どんな崇高な読経よりもこちらの方が送るにふさわしいと彼らは思っています。
少女Aの父親は工務店の社長。
誰がかわいい娘を妊娠させたのか? そいつが娘を殺したようなものだと。
犯人を捜そうと娘のクラスメイトたちを集める父親。
しかし、その意図を見透かしている同級生。
そんな中で出てきたのが、彼の会社に対する批判。
彼がマンションを立てたことによって、少年Aの家には陽が射さなくなり、おばあさんが「暗い、暗い」といいながら亡くなったと。
そんな時もうひとつの事件が…。
少年Bが少年Aの弁当を食べて倒れた。
その弁当には毒が。
なぜ少年Bが少年Aの弁当を食べたかと言うと、そのクラスでは弁当の「せり」(今で言うオークション)がされています。
仲介する生徒がいて、弁当を売買し、その手数料を取ります。
この少年Cは株の売買をしています。少年Aは、弁当がいらなくなり、売りに出したというわけですね。
一体誰が毒を入れたのか? なんのために?
少女Aが薄れゆく意識の中でつぶやいた言葉「アルキメデス…」
「アルキメデス」とは一体なんのことか?
少女Aの死。
弁当に入っていた毒。
次に少年Bの姉の交際相手の死体が発見されます。
はたしてこれらの事件に繋がりはあるのか? 繋がりがあるとしたら、一体どういう点で?
犯人は?
妊娠させた相手は?
僕は一気に読んだ記憶がよみがえります。
アルキメデスの意味、最後でわかりますが、その当時の時代背景を考えると納得がいきますね。
その当時70年安保が終わって、高校生たちの目標もなく、日本の高度成長期終盤、「シラケ世代」という言葉が出始めた時期でもあります。
氏も書いている、70年代を前にした学生は、体制の壁を壊そうとした人、ここに書かれている学生はその壁の高さを知った者たち。
トリックとかはその当時は斬新ですが、発表から40年が経過しているのでそれは考慮に入れるべきですね。
二転三転する内容、古い刑事と若い刑事の考え、高校生の幼さと大人びた雰囲気。
少年Bが少年Aの弁当を食べるべき必然性!
女子高校生のジェラシーなど。
面白く非常に読みやすい内容です。
この後、この作者「小峰元」氏は
ピタゴラス豆畑に死す
ソクラテス最後の弁明
パスカルの鼻は長かった
ディオゲネスは午前3時に笑う
イソップの首に鈴をつけろ
などを立て続けに発表します。
またおいおい紹介したいと思います。